彼女は、陸上で乾し固った姿を見ては、何の感動をも起さなかった種々様々の海草共が、呼吸し、生育し、お互に愛撫し、或は争闘し、不可解の言語を以て語り合ってさえいるのを目撃して、生育しつつある彼等の姿の、余りの異様さに、身もすくむ思いでした。
褐色の昆布の大森林、嵐の森の梢がもつれ合う様に、彼等は海水の微動にそよいでいます。
腐りただれて穴のあいた顔の様に、気味悪いあなめ、ヌルヌルした肌を戦かせ、無恰好な手足を藻掻く、大蜘蛛の様なえぞわかめ、水底の覇王樹と見えるかじめ、椰子の大樹にも比すべきおおばもく、いやらしい蛔虫の伯母さんの様なつるも、緑の焔と燃ゆる青海苔、みるの大平原、それらが、所々僅かの岩肌を残して、隈もなく海底を覆い、その根の方がどの様な姿になっているのか、そこにはどんな恐しい生物が巣食っているのか、ただ上部の葉先ばかりが、無数の蛇の頭の様に、もつれ合い、じゃれつき、いがみ合っています。