腐りただれて穴のあいた顔の様に、気味悪いあなめ、ヌルヌルした肌を戦かせ、無恰好な手足を藻掻く、大蜘蛛の様なえぞわかめ、水底の覇王樹と見えるかじめ、椰子の大樹にも比すべきおおばもく、いやらしい蛔虫の伯母さんの様なつるも、緑の焔と燃ゆる青海苔、みるの大平原、それらが、所々僅かの岩肌を残して、隈もなく海底を覆い、その根の方がどの様な姿になっているのか、そこにはどんな恐しい生物が巣食っているのか、ただ上部の葉先ばかりが、無数の蛇の頭の様に、もつれ合い、じゃれつき、いがみ合っています。
それを蒼黒い海水の層を越し、おぼろ気な電光によって眺めるのです。
ある場所には、どの様な大虐殺の跡かと思うばかり、ドス黒い血の色に染まったあまのりの叢、赤毛の女が髪をふり乱した姿の牛毛海苔、鶏の足の形のとりのあし、巨大な赤百足かと見ゆるむかでのり、中にも一際無気味なのは、鶏頭の花壇を海底に沈めたかと疑われる、鮮紅色のとさかのりの一むら、まっ暗な海の底で、紅の色を見た時の物凄さは到底陸上で想像する様なものではないのです。