しかも、そのドロドロの、黄に青に赤に、無数の蛇の舌ともつれ合う異形の叢をかき分けて、先にも云った幾十幾百の螢が飛びかい、電燈の光域に入るに従って、夫々の不可思議な姿を、幻燈の絵の様に現します。
猛悪な形相の猫鮫、虎鮫が、血の気の失せた粘膜の、白い腹を見せて、通り魔の様にす早く眼界を横ぎり、時には深讐の目をいからせてガラス壁に突進し、それを食い破ろうとさえします。
その時のガラス板の向側に密着した彼等の貪婪なる分厚の脣は、丁度婦女子を脅迫するならず者の、つばきに汚れ、ねじれ曲ったそれの様で、それから来るある聯想に、千代子は思わず震い上った程でした。