その階段というのは、両側の断崖が徐々に狭まって、その合した所に、水面から一直線に、雲に入るかとばかり、そそり立っている所の、これのみは真白に見えている、不思議な石階を云うのですが、それが周囲の黒ずくめの間に、見事な一線を劃して、滝の様に下っている有様は、その単純な構図故に、一際崇高の美を加えているのでありました。
千代子がこの雄大な景色に見とれている間に、廣介が何かの合図をしたらしく、ふと気がつくと、いつどこから現れたか、非常に大きな二羽の白鳥が、誇りがなうなじを上げ、その豊かな胸のあたりに、二筋三筋のゆるやかな波紋を作って、しずしずと、二人の立つ岸辺をさして近づいて来るのでした。
「まあ、大きな白鳥だこと」