例えば、広漠たる大森林が、凡て杉の巨木のみで出来ていて、その外には一本の雑木も、一茎の雑草も見当らぬ点、樹木の間隔配置に人知れぬ注意が行届いて、異様の美を醸し出している点、その下を通ずる細道の曲線が、世にも不思議なうねりを見せて、通る者の心に一種異様の感情を抱かせる点などは、明かに自然をしのぐ作者の創意を語っています。
恐らくは、彼の木の葉のアーチの快い均整にも、落葉の床の踏み心地にも、凡て注意深い人工が加味されているのではないでしょうか。
主人を乗せた二匹の驢馬は、落葉の深さに少しの跫音も立てないで、静かに木の下闇をたどります。