二人は長い間岸に立って、この夢の様な光景に見とれていたのですが、その長い間に少女は組み合せていた豊かな足を、一度組み直したばかりで、あきずまに、物憂い凝視を続けているのでした。
やがて、千代子が廣介にうながされて、驢馬に乗り、そこを立去ろうとした時に、少女の真上に咲いていた目立って大きな椿の花が一輪、液体がしたたる様に、ポトリと落ちて、少女のふくよかな肩先を滑り、沼の水に浮んだのです。
でも、それが余りに静であったものですから、沼の水も気づかなかったのか、一筋の波紋を描くでもなく、鏡の様な水面は依然として微動さえもしませんでした。