その間にも、何も知らぬ地下の花火係は、主人達の目を喜ばせようと、用意の花火丸を、次から次へ打上げていました。
或は奇怪なる動物共の、或は瑰麗なる花形の、或は荒唐無稽な様々の形の、毒々しく青に赤に黄に、闇の天空にきらめき渡る火焔は、そのまま谷底の水面を彩り、その中にポッカリ浮上っている、二つの西瓜の様な彼等の頭を、その表情の微細な点に至るまで、舞台の着色照明そのままに、異様に映し出すのでした。
一心に喋り続ける廣介の顔が、或る時は酔っぱらいの赤面となり、或る時は死人の様に青ざめ、或る時は黄疸病みの物凄い形相を示し、又ある時は真暗闇の中の声のみとなり、それが奇怪なる物語の内容と入れ混って、極度に千代子を脅すのでした。