彼女は昼も夜も、地下の宮殿の奥深く、廣介の居間の裏側の、重いとばりの蔭にかくれ、何人たりとも、その部屋に入ることを禁ぜられていたのです。
でも、主人の異常な嗜好を知っている島の人々は、定めしそのとばりの奥には、王様と女王様丈けの、歓楽と夢の世界が秘められているのであろうと、ニヤニヤ笑いながら噂し合う位で、誰一人疑いを抱くものとてもありません。
一体島の人達は、数人の男女を除いては、千代子の顔をはっきり見知っている者もなく、ふと行きずりに女王様のお姿を見たところで、それが果して本当の千代子かどうかを見分ける力もないのでした。