倭文子と茂とは、一年余りの月日を、淋しい日蔭の身で暮す内、獄中に発病した畑柳は、遂にそこの病舎で、この世を去った。
畑柳にも、倭文子にも、遺産の分配を迫る程の親戚はなかったけれど、巨万の富と、まだ若い未亡人の美貌に引きよせられて、求婚者が次から次へと現れ、余りの煩わしさと、富を目当の求婚のおぞましさに、茂は親切な乳母に任せ、たった一人で、偽名をして、気儘な湯治に出掛けたのだが。
そこで同じ宿に泊り合わせた三谷青年は、彼女の素性を少しも知らないで、彼女に烈しい思いを寄せた。
倭文子と茂とは、一年余りの月日を、淋しい日蔭の身で暮す内、獄中に発病した畑柳は、遂にそこの病舎で、この世を去った。
畑柳にも、倭文子にも、遺産の分配を迫る程の親戚はなかったけれど、巨万の富と、まだ若い未亡人の美貌に引きよせられて、求婚者が次から次へと現れ、余りの煩わしさと、富を目当の求婚のおぞましさに、茂は親切な乳母に任せ、たった一人で、偽名をして、気儘な湯治に出掛けたのだが。
そこで同じ宿に泊り合わせた三谷青年は、彼女の素性を少しも知らないで、彼女に烈しい思いを寄せた。