数十丈の懸崖を落る、人工の滝つ瀬、張りボテの大山脈、薄暗い杉並木、竹藪、大きな池、深い谷底、そこに天然の如く生茂る青葉、薫る菊花、そして、無数の生人形だ。
あの大鉄傘の中を、或は昇り、或は下り、迂余曲折する迷路、ある箇所は、八幡の藪不知みたいな、真暗な木立になって、鏡仕掛けで隠顕する、幽霊まで拵えてある。
明治の昔、流行した、パノラマ館、ジオラマ館、メーズ、さては数年前滅亡した、浅草の十二階などと同じ、追想的な懐かしさ、いかもので、ゴタゴタして、隅々に何かしら、ギョッとする秘密が隠されていそうな、あの不思議な魅力を、現代の東京に求めるならば、恐らくこの国技館の菊人形であろう。