文代さんが、賊のポケットの、麻酔薬をしませた白布を、水にぬれたハンカチと、すり換えて置いたことは、前に記した。
賊は激情の余り、少しもそれに気づかず、文代さんが麻酔したものと思い込み、意識を失った彼女を桜姫の人形に仕立てるという、気違いめいたトリックを思いついたのだ。
そして、自分も清玄人形になりすます為に、例の鏡の前の箱の中へ這入っている間に、その実正気の文代さんは、そっと桜姫の体内を抜け出し、近くの舞台に飾ってあったダンス人形を運んで来て、自分の洋服を着せ、桜姫の鬘を冠らせ、菊の衣の中へ埋めて、我が身替をさせたのだ。