頑丈な棺ではあったけれど、三谷が釘うつ時に、外からは見えぬ様に、丸めた紙をくさびにして、細い隙間を作っておいてくれたので、空気の欠乏を気遣うことはなかったが、それにしても、狭い箱の中で、音も立てず、身動きも出来ず、出棺までの長い時間、じっとしていなければならぬとは、アア既に、彼女の罪を償う為に、地獄の責苦が始まったのではなかろうか。
おびえ切った茂少年は、倭文子の裾にちぢまって、地獄の鬼めに、母さまを渡すまいと、彼女の膝小僧を、しっかり抱きしめ、こっそりとも音を立てず、息を殺して、ブルブルふるえていたが、ふと気がつくと、そのふるえがパッタリ止って、呼吸も静かになっていた。
おびえながら寝入ったのだ。