今の世に、十九世紀の昔語りにでもあり相な、貰い子殺しの部落が現存するかと思うと、真実の弟を叩き殺して、つい門前の土中に埋め、その御手伝いをさせたもう一人の弟を狂人に仕立てて、気違い病院に放り込むなど、まるで涙香小史飜案する所の、フランス探偵小説みた様な、奇怪千万な犯罪すら行われているのだ。
だが、それらは世に顕われたる犯罪である。
ある犯罪学者が云った様に、露顕する犯罪は十中二三に過ぎないものとしたならば、我々が日々の新聞で見ているよりも、一倍物凄く戦慄すべき大犯罪が、どれ程多く、つい知らぬ間に行われているか、恐らく想像の外であろう。