で、素人探偵の明智小五郎が、「蜘蛛男」事件を解決して、骨休めの休養をする間が、たった十日ばかりしかなかったというのも、小説家の作り話ではない。
つまり、蜘蛛男が、例のパノラマ地獄で無残の死をとげてから、やっと十日たつかたたぬ内に、この「魔術師」事件の第一の殺人が行われ、明智はのっぴきならぬ依頼によって、又その事件にかかり合わねばならぬ仕儀となったのである。
だが、彼は素人探偵とは云い条、看板を出してそれで生活している訳ではないのだから、いやだと思えば、別に差出がましく警察の御手伝いをする義務もない訳だが、この「魔術師」事件には何かしら彼をそそるものがあった。