その妙子さんが、子供の親達に混って、なぜ明智のボートを眺めていたかというに、妙子さんは婆やの外に進一という十歳ばかりの男の子を連れていて、その子供が明智の舟に乗せて貰っていたからである。
進一というのは、玉村氏所有の貧乏長屋に住んでいた小商人の息子で、両親に死に分れ、身寄りもないのを、妙子さんがお母さんにねだって、自分の弟の様にして育てている、可愛らしい子供であった。
そんな所を見ても、妙子さんが、世間知らずのねんねえではなくて、大家育ちの云うに云われぬしとやかさの内に、どこか凜とした物を持っていることが分るのだが。