二郎青年は、真夜中頃、異様な笛の音にふと目を覚ました。
耳をすますと、階下の主人の寝室と覚しきあたりから、何とも云えぬ、物悲しい調子の横笛の音が、細々と響いて来るのだ。
定まった曲を調ている訳ではなく、唯なんとなしに、出鱈目に吹き鳴らすといった調子だけれど、その節廻しが、不思議にも哀深く、美しく、例えば綿々たる恨みをかき口説くが如く、尽きせぬ悲愁を歎くが如く、一度耳にしたならば、一生涯忘れることが出来ない様な種類のものであった。
二郎青年は、真夜中頃、異様な笛の音にふと目を覚ました。
耳をすますと、階下の主人の寝室と覚しきあたりから、何とも云えぬ、物悲しい調子の横笛の音が、細々と響いて来るのだ。
定まった曲を調ている訳ではなく、唯なんとなしに、出鱈目に吹き鳴らすといった調子だけれど、その節廻しが、不思議にも哀深く、美しく、例えば綿々たる恨みをかき口説くが如く、尽きせぬ悲愁を歎くが如く、一度耳にしたならば、一生涯忘れることが出来ない様な種類のものであった。