定まった曲を調ている訳ではなく、唯なんとなしに、出鱈目に吹き鳴らすといった調子だけれど、その節廻しが、不思議にも哀深く、美しく、例えば綿々たる恨みをかき口説くが如く、尽きせぬ悲愁を歎くが如く、一度耳にしたならば、一生涯忘れることが出来ない様な種類のものであった。
福田氏は横笛なぞ吹けないのだし、それにこんな真夜中、仮令誰にもせよ笛を吹いているなんて変だ。
「空耳かしら、いやいや確かに横笛の音だ。
定まった曲を調ている訳ではなく、唯なんとなしに、出鱈目に吹き鳴らすといった調子だけれど、その節廻しが、不思議にも哀深く、美しく、例えば綿々たる恨みをかき口説くが如く、尽きせぬ悲愁を歎くが如く、一度耳にしたならば、一生涯忘れることが出来ない様な種類のものであった。
福田氏は横笛なぞ吹けないのだし、それにこんな真夜中、仮令誰にもせよ笛を吹いているなんて変だ。
「空耳かしら、いやいや確かに横笛の音だ。