波越警部は、犯人の傍若無人なやり口に、重ね重ねの大侮辱を蒙り、鬼刑事の名にかけて、最早やじっとしていることは出来なかった。
直ちに捜索刑事団が編成され、草の根を分けても犯人を引掴んで来いとの厳命が下され、波越刑事自身その先頭に立って、白髥橋上流の両岸、当時その辺にいたと覚しき荷舟乗合舟の類を、虱つぶしに調べ廻ったが、遂に何の得る所もなかった。
白髥橋上流には、遠く千住大橋まで一つの橋もなく、しかも大川はその中間で殆ど直角に折れ曲り、見通しが利かぬので、人知れずこの異様な流し物をするには、究竟の場所であったに相違ない。