これが、名物、玉村邸時計塔の来歴である。
附近の中学生達はこの時計塔を、玉村の「幽霊塔」と呼んでいた、涙香小史の「幽霊塔」という小説から思いついたもので、なる程そう云えば、丘陵の真中に、ポッツリ建っている邸といい、古風な煉瓦造りの建物と云い、なんとなく「幽霊塔」じみて見えるのだ。
時計塔は、文字盤の直径が二間もある、べらぼうに大きなもので、古風なぜんまい仕掛けだが、余程精巧に出来ていると見え、大地震に会っても、別に狂いも出来ず、現に今でも、人間の背丈程もある太い鋼鉄針が動いているし、時間時間には教会堂の鐘の様な時鐘が鳴り響くのだ。