二年程前、アメリカから帰った、謂わば成金紳士で、社交界には余り名を知られていないが、一種の宝石道楽で、この二三ヶ月の間に玉村商店から買上げた額は、到底由緒正しい貴族富豪などの及ぶ所ではなかった。
買上げた宝石を、誰に与えるのか、夫人も子供もない全くの独り者で、小石川区内の、もと旗本の邸だという、古い大きな家を買求めて、数人の召使と共に住んでいた。
アメリカ式な、無造作な人物で、自分で自分の自動車を操縦して、よく玉村商店へ遊びに来たが、話し好きで、どことなく愛嬌があったので、主人の玉村氏ともじき懇意を結び、お互に訪問し合う程の間柄であった。