前章の出来事があってから、約一ヶ月の後、年を越して一月の終りに近いある日のこと、玉村氏は、一郎と二郎と妙子の三人の子供を連れて、牛原氏の晩餐会に招かれた。
約束はもう二三ヶ月も以前から出来ていたのだけれど、得二郎氏変死以来引続く凶事に、晩餐会どころではなく、長い間延び延びになっていたのが、この一月程、何の変事も起らず、流石の悪魔も退散したかと思われる程無事な日が続いたので、漸く約束を果す運びになったのである。
併し、明智小五郎の兼ねての注意に基き、玉村氏は、この何の危険もない晩餐会にも、屈強の書生数名を、護衛として同伴することを忘れなかった。