そこで、この男は、だんだん乏しくなって行く空気にあえぎながら、ガリガリと土を掻いて、息の絶えるまで、もがき苦しんだのである。
善太郎氏は、思わず洞穴の前にひざまずいて死者の苦悶をやわらげ、なき父の罪障消滅を祈る為に、念仏を唱えたが、ふと見ると、床に落散っている煉瓦の塊に、何かしら文字の様な掻き傷のあるのに気がついた。
アア、さっき奥村源造が、煉瓦に刻んだ遺書と云ったのは、これのことだなと思うと、恐ろしさに身震いが出たが、恐ろしければ恐ろしい程、それを読んで見ないではすまされぬ気持ちで、あちこちにちらばった煉瓦の塊を継ぎ合わして、字とも絵とも見分け難い掻き傷を、(恐らく懐中ナイフか何かを持っていて、暗闇の中で書きつけたものであろう)苦心して読み下して見ると、それは、次の様な身の毛もよだつ文句であった。