若し一人や二人の救助者であったなら、恐らく玉村親子の息のある内に、救出すことは、到底不可能であっただろうが、多人数の力は恐ろしい、てんでに道具を探し出して来て、煉瓦の継目をこじるもの、叩くもの、蹴飛ばすもの、汗みどろの奮闘で、やっと壁をくずし、鉄扉の錠前を破ることが出来た。
扉を開くと、一度にドッと溢れ出す濁水、先に立った警官達は、はずみを食って、階段の根本まで押し流される騒ぎであったが、兎も角も、親子三人のものを、助け出すことに成功した。
地上の一室へ運んだ時には、三人ともグッタリとなって、殆ど死骸も同然であったが、焚火をするやら、湯を沸かすやら、手を尽した介抱に、善太郎氏も一郎も二郎も、日頃健康な人達のこと故、難なく気力を恢復した。