なぜと云って、あいつの顔には、毒々しい小豆色の小蛇が、まるでそこから吹き出した血のりのかたまりででもある様に、のたうっていたからです。
その小蛇は、しばらくの間、顔の上をノロノロと這い廻って、焔の様な黒い舌で、血のりを嘗めていましたが、やがて、顎を伝って、首から床へと這い降りると、何とも云えぬ、丁度奥村源造の呪いの言葉を思出させる様な、いやないやな恰好に、鎌首をもたげながら、スルスルと僕の方へ這い寄って来るではありませんか。
僕はギョッとして、その辺にあり合う棒切れを掴むと、いきなり小蛇をなぐりつけようと身構えましたが、蛇もその勢に恐れをなしたのか、僕をよけて、部屋の外へ消えてしまったのです。