やみの中からとびだしてきて、通行人の首をしめようとしたとか、夜、子どもがひとりで歩いていると、まるで黒いふろしきのように子どもをつつんで、地面をコロコロころがっていってしまうとか、種々さまざまのうわさが伝えられ、怪談は怪談をうんで、若い娘さんや、小さい子どもなどは、もうおびえあがってしまって、けっして夜は外出しないほどになってきました。
この魔物は、むかしの童話にある、かくれみのを持っているのと同じことでした。
かくれみのというのは、一度そのみのを身につけますと、人の姿がかき消すように見えなくなって、人中で何をしようと思うがまま、どんな悪いことをしても、とらえられる気づかいがないという、ちょうほうな魔法なのですが、黒い魔物は、それと同じように、やみのなかにとけこんで、人目をくらますことができるのでした。