もう十一時ごろでしたが、篠崎君のおうちから一キロほどもはなれた、やっぱり玉川電車ぞいの、あるさびしいやしき町を、一人のおまわりさんが、コツコツと巡回していますと、人通りもない道のまんなかに、五つぐらいの女の子が、シクシク泣きながらたたずんでいるのに出あいました。
それがさいぜん黒い怪物にさらわれた、篠崎君の小さいいとこだったのです。
まだ幼い子どもですから、おまわりさんがいろいろたずねても、何一つはっきり答えることはできませんでしたが、片言まじりのことばを、つなぎあわせて判断してみますと、黒い怪物は、子どもをさらって、どこかさびしい広っぱへつれていき、お菓子などをあたえて、ごきげんをとりながら、名まえをたずねたらしいのですが、「木村サチ子」と、おかあさんに教えられているとおり答えますと、怪物は、きゅうにあらあらしくなって、サチ子さんをそこへすておいたまま、どこかへ行ってしまったというのでした。