しかも、塔の中はからっぽではなく、すっかり純金でうずまっているのですから、ぜんたいの目方は八十キロをこえ、材料の金だけでも時価五百万円ほどの高価なものでした。
ちょうどこの黄金塔ができあがったころ、同業者の銀座の某時計店に、ショーウィンドーやぶりの賊があって、そこに陳列してあった二百万円の金塊がぬすまれたというさわぎがおこったものですから、大鳥氏は、せっかく苦心してつくらせた黄金塔が、同じようにぬすまれてはたいへんだと、今まで店の間にかざっておいたのを、にわかに奥まった部屋にうつし、いろいろな防備をほどこし、盗難にそなえました。
その奥座敷は十畳の日本間なのですが、まず、まわりのふすまや障子をぜんぶ、がんじょうな板戸にかえ、それに、いちいち錠前をつけ、かぎは主人と支配人の門野老人のふたりだけが、はだ身はなさず持っていることにしました。