むろん、大鳥時計店では防備装置のことをかたく秘密にしておいたのですけれど、いつとはなく輪に輪をかけたうわさとなって、世間にひろがり、塔のおいてある部屋にはいると、足がすくみ、からだがしびれてしまうのだとか、鋼鉄でできた人造人間が番をしていて、あやしいものがしのびよれば、たちまちつかみ殺してしまうのだとか、いろいろの奇妙な評判がたって、それが新聞にものり、今ではだれ知らぬものもないほどになっていました。
二十面相はそこへ目をつけたのです。
一夜に千万円もの美術品をぬすんだこともある二十面相のことですから、黄金の塔そのものは、さほどほしいとも思わなかったでしょうが、それよりも、うわさに高いげんじゅうな防備装置にひきつけられたのです。