小泉君は女の子を送りとどけてしまったら、もう用事はないのですから、そのまま帰ろうと思っていたのですが、紳士が玄関の外へ出てきて、手を取るようにしてすすめますので、それをふりきって帰るわけにもいかず、つい家の中へさそいこまれてしまいました。
はいってみますと、まさかこの大きなおうちに、老紳士と愛子ちゃんとふたりきりで住んでいるのではないでしょうが、みょうなことに、おばさんも、女中も、書生も、だれも出てこないのです。
家の中が、なんだかあき家のようにガランとしていて、へんにうそ寒いような感じなのです。