自動車の中の明智のたいどもふしぎでしたが、それよりも、もっとふしぎなことが、自動車の屋根の上におこっていました。
さきほど明智のあとを尾行していた、チンピラ隊のひとりが、いつのまにか、そこへ先まわりをして自動車のかげに、身をかくしていたのです。
そして明智と小林とが、自動車の中にはいり、運転手を使いにだした、あのわずかなあいだに、そのチンピラは、まるでサルのように自動車の後部に、よじのぼり、車体の上にあがると、その屋根に、ヒラグモのように、つっぷして、からだの上に、おとなのレインコートのようなものをかけて、その下に、じっとかくれていました。