じぶんだけ助かるというのは、あまりえらい船長じゃないね。
大洋丸が無電で助けをもとめるとき、今どこにいるかという位置を知らせたのはいうまでもないが、福永船長の遺言書には、そのとき、じぶんはあわてていたので、たいへんなまちがいをしたと書いてある。
経度の数字をまちがえて無電技師につたえたので、あとで大洋丸がまるでけんとうちがいの場所に沈んだようになってしまって、保険会社が、船会社に保険金をはらったあとで、沈んだ場所をしらべると、そこはひじょうに深いところで、船はもちろん、荷物も引きあげられないことがわかって、あきらめてしまった。