傍で見ていると、この大将が一番呑気そうに、いやあ、はああと気楽にうたってるが、その実ははなはだ責任が重くって非常に骨が折れるとは不思議なものだ。
おれと山嵐が感心のあまりこの踴を余念なく見物していると、半町ばかり、向うの方で急にわっと云う鬨の声がして、今まで穏やかに諸所を縦覧していた連中が、にわかに波を打って、右左りに揺き始める。
喧嘩だ喧嘩だと云う声がすると思うと、人の袖を潜り抜けて来た赤シャツの弟が、先生また喧嘩です、中学の方で、今朝の意趣返しをするんで、また師範の奴と決戦を始めたところです、早く来て下さいと云いながらまた人の波のなかへ潜り込んでどっかへ行ってしまった。