現に日本在来の絵画はおもにこの技巧だけで価値を保ったものであります。
それにも関わらず、これに対して鑑賞の眼を恣にすると、それぞれに一種の理想をあらわしている、すなわち画家の人格を示している、ために大なる感興を引く事が多いのであります。
たとえば一線の引き方でも、(その一線だけでは画は成立せぬにも関わらず)勢いがあって画家の意志に対する理想を示す事もできますし、曲り具合が美に対する理想をあらわす事もできますし、または明暸で太い細いの関係が明かで知的な意味も含んでおりましょうし、あるいは婉約の情、温厚な感を蓄える事もありましょう。