私はこの男を一つ犠牲にしてやろうと目ざしていたある友人、と云っても決してその男に恨みがあった訳ではなく、長年の間無二の親友としてつき合っていた程の友達なのですが、私には却って、そういう仲のいい友達などを、何にも云わないで、ニコニコしながら、アッという間に死骸にして見たいという異常な望みがあったのです。
その友達と一緒に、房州のごく辺鄙なある漁師町へ避暑に出かけたことがあります。
無論海水浴場という程の場所ではなく、海にはその部落の赤銅色の肌をした小わっぱ達がバチャバチャやっている丈で、都会からの客といっては私達二人の外には画学生らしい連中が数人、それも海へ入るというよりは其辺の海岸をスケッチブック片手に歩き廻っているに過ませんでした。