無論海水浴場という程の場所ではなく、海にはその部落の赤銅色の肌をした小わっぱ達がバチャバチャやっている丈で、都会からの客といっては私達二人の外には画学生らしい連中が数人、それも海へ入るというよりは其辺の海岸をスケッチブック片手に歩き廻っているに過ませんでした。
名の売れている海水浴場の様に、都会の少女達の優美な肉体が見られる訳ではなく、宿といっても東京の木賃宿見たいなもので、それに食物もさしみの外のものはまずくて口に合わず、随分淋しい不便な所ではありましたが、その私の友達というのが、私とはまるで違って、そうした鄙びた場所で孤独な生活を味うのが好きな方でしたのと、私は私で、どうかしてこの男をやっつける機会を掴もうとあせっていた際だったものですから、そんな漁師町に数日の間も落ちついていることが出来たのです。
ある日、私はその友達を、海岸の部落から、大分隔った所にある、一寸断崖見たいになった場所へ連れ出しました。