ある時はサーカスの見物人の中に混っていて、突然、ここで御話するのは恥しい様な途方もない変てこな姿勢を示して、高い所で綱渡をしていた女芸人の注意を奪い、その女を墜落させて見たり、火事場で、我子を求めて半狂乱の様になっていたどこかの細君に、子供は家の中に寝かせてあるのだ「ソラ泣いている声が聞えるでしょう」などと暗示を与えて、その細君を猛火の中へ飛込ませ、つい焼殺して了ったり、或は又、今や身投げをしようとしている娘の背後から、突然「待った」と頓狂な声をかけて、そうでなければ、身投げを思いとまったかも知れない其娘を、ハッとさせた拍子に水の中へ飛込ませて了ったり、それはお話すれば限りもないのですけれど、もう大分夜も更けたことですし、それに、皆さんもこの様な残酷な話はもうこれ以上御聞きになりたくないでしょうから、最後に少し風変りなのを一つ丈け申上げてよすことに致しましょう。
今まで御話しました所では、私はいつも一度に一人の人間を殺している様に見えますが、そうでない場合も度々あったのです。
でなければ、三年足らずの年月の間に、しかも少しも法律にふれない様な方法で、九十九人もの人を殺すことは出来ません。