第二の点は、所謂犯人の足跡なるものが、博士邸の裏口から発して線路までは来ていたが、再び線路から博士邸へ立帰った跡はなかったのである。
この点を黒田氏は如何に解釈せられたかは――この重大な点について、心なき新聞記者は何事も報道しない故に――私には分らないが、多分犯人が犠牲者のからだを線路へ置いた後、何かの都合で、線路づたいに廻り路をして立帰ったとでも判断せられたのであろう。
――事実、少し廻り路をすれば足跡を残さないで、博士邸まで立帰り得る様な場所が無くもなかったのである――そして足跡に符合する短靴そのものが、博士邸内から発見せられたことによって、仮令立帰った跡はなくとも、立帰ったという証拠は十分備わっているとでも考えられたのであろう。