犬というものを知っている人は、こういう場合に、唯だ口で追った計りでは立去るものでないが、何か用達しをいいつける――例えば、木切れを遠くへ投げて、拾って来させるという様な――時は、必ずそれに従うものだということを否まないであろう。
この動物心理を利用して、夫人は、靴をジョンに与えて、其場を去らしめたのである。
そして、その靴が、少くとも、奥座敷の縁側のそばに置かれることと――当時多分縁側の雨戸が閉ざされていたので、ジョンもいつもの習慣通りには行かなかったのであろう――内側からは押しても開かぬ所の木戸にささえられて、再び犬がその場へ来ないことを願ったのである。