泣叫ぶ子供は、友人の細君に託し、友人にも手伝って貰って、出来る丈けの品物を持出そうと、彼は火事場へ取って返した。
寝衣姿の狂気めいた北川氏は、人間がまだ言葉というものを知らなかった、原始時代に立帰って、意味を為さぬ世迷事を口走り乍ら、息を切らして走るのだった。
そうして、友人の家との二三町の間を二回往復すると、もう火勢が強くなって、品物を持出すどころではなく、危くすると命にも拘りそうになったので、彼は兎も角も友人の家に落着いて何よりも先ず、痛みを感じる程に、カラカラに渇いた喉を、コップに何杯も何杯もお代りをして、湿したのだった。