これは、やっと火事場から持出した彼女の手文庫の底に丁寧に天鵞絨のサックに入れて仕舞ってあったのを、つい数日前ふとしたことから発見したんだが、この妙子の秘蔵のメダルの中には、一体まあ何が入っていたと思う。
この中には、野本君、その男の――越野が火事場で出逢った男の――妙子を無残に焼殺した男の――而かも、其の妙子が以前からずっと愛しつづけていた男の――写真が守り本尊の様にはりつけてあったのだよ。
併し、若し、これが妙子が娘時代にその男の写真をはりつけて置いたまま、打忘れていたとでもいうのなら、まだしも、現に、彼女は僕と結婚した当座、確かにこの中へは僕の写真を貼りつけていたのだからな。