Tはたれもいないのを確めると、自分の席へはつかないで、隣の、彼の助手を勤めている若い女事務員のS子のデスクの前に、そっと腰をかけました。
そして何かこう盗みでもする時の様な恰好で、そこの本立ての中に沢山の帳簿と一緒に立ててあった一挺の算盤を取出すと、デスクの端において、如何にもなれた手つきでその玉をパチパチはじきました。
「十二億四千五百三十二万二千二百二十二円七十二銭なりか。
Tはたれもいないのを確めると、自分の席へはつかないで、隣の、彼の助手を勤めている若い女事務員のS子のデスクの前に、そっと腰をかけました。
そして何かこう盗みでもする時の様な恰好で、そこの本立ての中に沢山の帳簿と一緒に立ててあった一挺の算盤を取出すと、デスクの端において、如何にもなれた手つきでその玉をパチパチはじきました。
「十二億四千五百三十二万二千二百二十二円七十二銭なりか。