取調の結果、犯人は老人を殺して置いて、老人の巾着から鍵を取出し、箪笥の抽斗をあけ、その中の手提金庫から多額の債券や株券を盗み出したことが分りました。
何分その下宿屋は、夜更けに帰って来る客の為に、いつだって入口の戸に鍵をかけたことがないのですから、賊の忍入るにはお誂向きなんですが、その代りによくしたもので、殺された老主人が馬鹿に眼敏い男なので、滅多なこともなかろうと、皆安心していた訳なんです。
現場には別段これという手掛りも発見されなかったらしいのですが、唯一つ、老主人の枕下に一枚の汚れたハンカチが落ちていて、それを其筋の役人が持って行ったという噂なんです。