彼は、広い陳列棚の中へはいって行ったかと思うと、中でもいちばん大きい、木彫りの古代仏像に近づき、いきなり、そのかっこうのよい腕を、ポキンと折ってしまったではありませんか。
しかもそのすばやいこと、三人の人たちが、あっけにとられ、とめるのもわすれて、目を見はっているまに、同じ陳列棚の、どれもこれも国宝ばかりの五つの仏像を、つぎからつぎへと、たちまちのうちに、片っぱしからとりかえしのつかぬ傷ものにしてしまいました。
あるものは腕を折られ、あるものは首をひきちぎられ、あるものは指をひきちぎられて、見るもむざんなありさまです。