三度の食膳には、老夫婦が心尽しの、新鮮な山の珍味が列べられ、退屈すれば、うらうらと日ざしの暖かい庭の散歩、夜ともなれば、老夫婦の語る山里の物珍らしい物語、忘れようとて忘れられぬ悲しみを持つ川手氏も、環境の激変に心もなごみ、時には、何か保養の旅にでも出ているような気分になることもあった。
ところが、山住いの物珍らしさに、だんだん慣れて来るにつれて、川手氏は身辺に何となく気がかりな空気を感じ始めた。
あれ程の用心をしたのだから、復讐鬼がこの山中まで追駈けて来るということは、全く考えなかった。
三度の食膳には、老夫婦が心尽しの、新鮮な山の珍味が列べられ、退屈すれば、うらうらと日ざしの暖かい庭の散歩、夜ともなれば、老夫婦の語る山里の物珍らしい物語、忘れようとて忘れられぬ悲しみを持つ川手氏も、環境の激変に心もなごみ、時には、何か保養の旅にでも出ているような気分になることもあった。
ところが、山住いの物珍らしさに、だんだん慣れて来るにつれて、川手氏は身辺に何となく気がかりな空気を感じ始めた。
あれ程の用心をしたのだから、復讐鬼がこの山中まで追駈けて来るということは、全く考えなかった。