その様子を、次の間から新しく傭い入れられた助手の林という青年が、心配そうに窺っていた。
林は去年ある私立大学の法科を出たばかりの、まだ二十五歳の青年であったが、探偵小説を愛読した余り、未来のシャーロック・ホームズを夢見ている男で、小池、木島の二人の先任助手が、殺人鬼の毒手に斃れたことも承知の上、志願して博士の助手となったのである。
謂わば、この事件を目当てに傭われたようなものであったから、三重渦巻の指紋の主が、意外にも美しい女性と分り、その女性が不思議な失踪をしたことを知ると、林はもう夢中であった。