復讐事業の為に、先ず民間探偵に化けて、様々の事件で手柄を立てて見せた遠大の計画といい、怪指紋を巧みに利用して、被害者を逆に犯人と見せかけた着想といい、イヤ、そればかりではない、犯人からの脅迫状を、塵芥箱の中や、当の被害者のポケットに入れて置いて、さも不思議そうに驚いてみせたり、怪指紋のゴム印を、色々な器物や人間の頬にまで捺して、自分自身で捺した指紋を怪しんで見せたり、たとえ正体を見破られた苦しまぎれとはいえ、助手を二人まで我が手にかけて、嫌疑の転嫁を計ったり、その機敏と大胆不敵には、流石の僕も舌を捲かないではいられなかった。
君の五つの殺人のうちで、最も手の込んでいたのは、妙子さんの場合だが、あの記録を読んだ時にも、僕は君のすさまじい虚栄心に目を見はった。
ただ予告の殺人を成しとげたいばっかりに、君は実に手数のかかるトリックを考え出している。