姉の不二子さんは今年二十二歳、仲々の才媛で、内地の女学校を卒業した上、外交官の伯父さんの監督で、二年程欧洲へ勉強に行っていたこともある位、類なき美貌の上にこの閲歴だから、所謂社交界の花とうたわれているのだが、その不二子さんが、執事の言葉を借りると、実に言語道断の所業を始めたのである。
事の起りは今から一週間程前の夜、いつもお母さまの許しを得、行先を告げて外出する不二子さんが、どうしたことか、日暮にふと居なくなったまま、十二時過ぎまで帰らなかった。
しかも帰って来ると、誰にも顔を合わさず、ソッと寝室へ這入った様子が、どうもただ事でない。