聞くところによれば、明智氏は警視庁と協力して、怪賊黄金仮面の逮捕に尽瘁していた関係上、賊の恨みを受け、恐ろしい脅迫状を送られたこともあるが、最近は賊の目に見えぬ攻撃が烈しくなったので、同氏は用心深く、アパートの一室にとじこもって、滅多に外出もしなかった程である。
それらの事情を綜合すれば、昨夜の発砲は黄金仮面か或はその同類の仕業に相違ないとの見込みである。
アパートの隣室に住居せる会社員O氏夫人A子さんは、ガラスの割れる物音に驚き、窓から覗いて見ると、明智氏の部屋がただならぬ様子なので、同氏のドアをノックしたが、何の返事もない。