しかも、この部屋の異様なことは、他の室の例によれば、黒いカーテンを張るべき窓に、ここ丈けは室内の色彩とは全く違った、滴るばかり鮮かな深紅の薄絹がはりつめてあった。
どの部屋にも、電燈は勿論、ランプや燭台らしいものもなく、その代りには、各部屋の例の薄絹を張った窓の外の廊下に、赤々と燃え上る、焔の鉢をのせた三脚架が据えられ、その古風な焔が窓の色とりどりな薄絹を通して、各部屋を、キラキラと照らしていた。
伯爵のこの陰欝な、併し詩的な考案は、か様に書き記したのでは、誠に単純なものであるが、実際は計り知られぬ華美な、夢幻的な光景を作り出していた。