老人の話をかいつまんで云うと、二十年以前、彼がまだ三十代の壮年であった頃、彼の美しい女房が情夫を作って、夫の留守を窺っては、その男を引入れていることが、ふとしたことから分った。
そこで彼は、その日旅に出ると偽って、姦夫姦婦が媾曳をしている現場を押え、いきなり用意の短刀で、男を一突きに突き殺してしまった。
「女房の奴、それを見ると、何だかえたいの知れぬわめき声を立てて、私に飛びかかって来ましたが、手向いでもするのかと思うと、そうではなくて、卑怯な奴ではありませんか、例の嬌態で私にあまえて、自分丈け命を助かろうとするのです。